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ミヒャエル・ハネケ監督『ハッピーエンド』は日本で起きた16歳少女の母親薬殺未遂事件がモデル【ネタバレあり】

ハッピーエンド 2017年

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再生時間:107分

映画『ハッピーエンド』とは

「なぜ、やった?」「何を」
85歳の祖父と、13歳の孫娘。ふたりを惹きつける大きな”秘密”。ハネケ監督がわたしたちに問いかける問題作。

白いリボン』と『愛、アムール』で二度にわたって、カンヌ国際映画祭の最高賞パルムドールに輝いた名匠ミヒャエル・ハネケ。『愛、アムール』では老境の夫婦ジョルジュとアンヌの愛と死に透明な視線を投げかけ、アカデミー賞外国語映画賞を受賞した。それから5年、昨年のカンヌ映画祭を衝撃の渦に巻き込んだ『ハッピーエンド』では、フランスの移民問題を象徴する街カレーの瀟洒な邸宅に住まうロラン家を背景に、『愛、アムール』の続きともとれる、新たな愛と死を衝撃的に描く。

ハネケは祖父ジョルジュと疎遠だった孫娘エヴの再会に光を当てる。幼い頃父に捨てられ、愛に飢え、死とSNSの闇に取り憑かれたエヴの閉ざされた扉を、ジョルジュの衝撃の告白がこじ開ける。『ハッピーエンド』は、現代のヨーロッパに“教養あるブルジョワジーはもはや存在しない”ことを炙り出しながら、ディスコミュニケーションの闇が広がる今、孤独な魂の会合が断絶した絆に血が通う瞬間に観客を立ち会わせる。

映画『ハッピーエンド』公式サイト

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この映画は2005年に日本で起きた16歳の少女が母親薬殺未遂事件がモデル

[ミヒャエル・ハネケ監督のインタビューより]

日本での少女の薬殺未遂事件をニュースで読んで、この映画のきっかけになっていることは事実です。この事件は私にとって大きなインスピレーションを与えてくれました。SNSでどういう事が起こり得るか、すごくいい例だったと思います。現代のSNSは、昔の教会が持っていた役割を果たしていると思うのです。カトリックの教会では懺悔がありますよね、この少女がなぜSNSにポストしていたのかと思うと、匿名で投稿していても、どこかで発見されるかもという思いがあると思うんです。私が思うには、注目を集めたいという気持ちが一つあって、もう一つは罰を受けたい、という欲求、そいうものがモチーフにあると思うんです。それは昔教会で人が懺悔するという思いと同じです。

ミヒャエル・ハネケ、「ハッピーエンド」は日本の事件からインスピレーション受けたと明かす : 映画ニュース - 映画.com

 

キャスト・スタッフ

ジャン=ルイ・トランティニヤン、イザベル・ユペール屈指の実力を持つ名優たち
祖父ジョルジュを演じるのは『愛、アムール』の名優ジャン=ルイ・トランティニャン。ジョルジュの娘役には、『ピアニスト』はじめ、ハネケ作品では常連のイザベル・ユペール。昨年『エル ELLL』でオスカー主演女優賞にもノミネートされ、乗りに乗るユペールがビジネスマンとして辣腕を振るう一方で、エゴイスティックな現代ブルジョワの姿を体現してみせる。トランティニャンとユペールが前作に続いて父と娘を演じるのも見逃せない。ほか、マチュー・カソヴィッツトビー・ジョーンズら、ヨーロッパ屈指の実力俳優の饗宴に、ハネケによって抜擢されたファンティーヌ・アルドゥアンがヒロインとして加わった。

映画『ハッピーエンド』公式サイト

ミヒャエル・ハネケ監督 作品一覧
  • 1989年 セブンス・コンチネント
  • 1992年 ベニーズ・ビデオ
  • 1994年 71フラグメンツ
  • 1997年 ファニーゲーム
  • 2000年 コード・アンノウン
  • 2001年 ピアニスト
  • 2003年 タイム・オブ・ザ・ウルフ
  • 2005年 隠された記憶
  • 2008年 ファニーゲーム U.S.A
  • 2009年 白いリボン
  • 2012年 愛、アムール
  • 2017年 ハッピーエンド
ハッピーエンドあらすじ

フランス・カレーの豪邸に3世帯で暮らすロラン家。彼らは同じテーブルを囲んでいても互いに無関心。隠居した家長のジョルジュはどうすれば死ねるかを考えてばかりいた。そんなある日、母を亡くしたジョルジュの孫娘・エヴがロラン家で暮らすことになる。

「ハッピーエンド」(洋画 / 2017年)の動画視聴・あらすじ | U-NEXT

ハッピーエンド解説 ※ネタバレあり

少女の狂気
13歳の少女が母親に殺害しようとする。一日中、文句を言っている母親にうんざりし、母親に薬を盛り「人をおとなしくさせるのは簡単」とその様子をSNSで配信する。

母親が入院し、少女は離婚した父親の家へ。父親の家は実業家の家で、少女の祖父、伯母、父親、父親の二番目の妻と生まれたばかりの子供、伯母の息子が住んでいる。

家族それぞれの状況

▼祖父
引退した祖父は死ぬことばかりを考えており、自殺未遂事件を起こす。

▼伯母
父親から受け継いだ会社の社長をしている。息子に構い過ぎて、鬱陶しがられている。のちに息子を会社の役員から外す。取引先の銀行の幹部と婚約(この男に会社を乗っ取られそうな予感も・・・)。

▼父親
医師をしている。妻と生まれたばかりの子供がいながら、チェロ奏者と変態チャットを楽しんでいる。

▼伯母の息子
会社を継ぐ意志がない。会社で起きた事故の被害者の家族が住む団地に一人で謝罪に行き、ボコボコに殴られてしまう。裕福な人たちばかりが集まった母親の婚約パーティーに突然、移民の労働者を招き入れたり、ブルジョワ層に対する反抗心がある。騒ぎは起こすが人情派。

少女の母親の死亡
入院していた母親が死亡し、その後、少女も自殺未遂を起こす。母親の死亡については淡々と受け止めていたものの、少女が自殺未遂を起こしたのは、認知症の気がある祖父に祖父の誕生日パーティーで同居しているにも関わらず「君は誰だっけ?」と言われ、自分の居場所がないような気になったのが原因ではないかと推測する。

少女は自殺未遂で入院した病室で父親に、父親の変態チャットを見たことを告げる。父親は誰も愛せない人間であると責めるが、そのこと自体は別にいいから、とにかく私を施設に入れないでほしいと頼む。

少女と祖父の秘密の会話
祖父の部屋で、祖父と孫娘である少女の告白。祖父は寝たきりで口が利けなくなった祖母を3年介護し、自分で妻の首を絞めて殺したと告白する。そして「正しい選択をした。一度も後悔していない」と話す。

一方、少女は、臨海学校で友達の食事に薬を盛った話をする。祖父が「後悔しているか?」と尋ねると「それほど」と一度は答えるが、その後「やはり後悔している。後になって彼女が悪くないことがわかったから」と言う。

この話は友達の話として語られているが、母親のことを話していると推測される。冒頭の母親に薬を盛る様子をスマホで映しているシーンでも、この会話の中でも「人をおとなしくさせるのは簡単」と言っていることと、「後になって彼女が悪くないことがわかったから」と話しており、これは父親が誰も愛せない人間であることを彼女自身が知り、母親がああなったのも仕方ないと考えたからだと思われる。

最期に祖父が「なぜ薬を?」と聞くと「わからない」と答える少女。祖父はそこに少女の狂気を確信する。

少女に自殺ほう助をさせる祖父

海辺のレストランで行われた、少女の伯母の婚約パーティーで、伯母の息子がトラブルを起こし、てんやわんやの騒ぎになっている中、祖父は少女に「外に出よう」と声をかける。祖父の車いすを押す少女。海ギリギリまで、車いすを押させる祖父。祖父は少女に戻るよう言い、ひとり海辺に残る。車いすごと、海に入っていく祖父。遠くからそんな祖父を見つめ、スマホを取り出し、その様子を撮影する少女・・・最後は伯母と父親が祖父を助けに向かうシーンで終わる。

似た者同士の祖父と少女

少女が父親が住む家に越して来て、転校初日に父親が少女を車で迎えに行き、突然号泣するシーンがある。慌てる父親。一通り泣いた後「もう済んだことだから」と切り替える少女。これは母親に薬を盛ったことへの後悔の涙と思われるが、この彼女の切り替えの潔さと、祖父が妻を殺した際の「正しい選択をした」と言い切る潔さが似ている。
祖父は祖父で一応、少女の心配をし、お互い秘密の告白した時に、彼女を思いやるのと同時に「この子なら自分の自殺を手伝ってくれるだろう」と確信したように思う。

自分の娘の婚約パーティーで、自分の孫娘に手伝わせて、自殺しようとする老人。子供や孫に迷惑がかかることなどお構いなしに、自分の欲望を優先させる老人の身勝手さ。そして、その自殺の様子を淡々とスマホで撮影する少女のイマドキっぷり。

少女役のファンティーヌ・アルデュアンの天使のようなかわいらしさと、フランスの海街の美しさ。そして、少女の狂気と家族の混沌。美しい映像の中で、人間のドロドロ感がいい感じで描かれている。全然、ハッピーエンドじゃないのに映画の題名は「ハッピーエンド/ Happy End 」。好きだわ、こういう映画。

ハッピーエンドの評価

個人的な映画の満足度★★★★☆

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