愛と喝采の日々 1977年
再生時間:119分
あらすじ・考察
※ネタバレあり
プリマとして成功したエマと妊娠をきっかけにバレエを諦めたディーディー。40代となった2人の対照的な人生を描いた作品。
ディーディーとエマの再会
ディーディーは夫と共に、田舎町でバレエ教室を経営している。ディーディーが住む町にエマが所属するバレエ・カンパニーが公演にやって来たことで2人は再会する。ディーディーの娘エミリアの才能を見抜いたエマは彼女を自分が所属するカンパニーに誘い、エミリアはエマが所属するニューヨークのバレエ団に入団することになる。
エミリアとディーディー、NYへ
ニューヨークに引っ越すエミリアの付き添いとして、ディーディーも夏の間だけニューヨークに引っ越すことになる。
ディーディーはバレエ団の中で頭角を現し、スターダンサーのユーリと付き合うようになる。しかし女たらしのユーリはすぐに別のダンサーに乗り換え、エミリアは失恋してしまう。
ディーディーの浮気と娘エミリアとの確執
そんな中、母親ディーディーもニューヨークで元カレに再会し、浮気をする。ある夜、ディーディーが家に帰って来なかったことから、母親の浮気に気づいたエミリアはディーディーと距離を取るようになる。
一方、エミリアは尊敬されるベテランダンサー、エマとは交流を深め、彼女を尊敬する。それを見た母親ディーディーはエマに嫉妬する。
エミリアの出世
エマたちが所属するバレエ団の25周年公演で、ソロを踊ったエミリアは実力を認められ、眠れる森の美女の主演を勝ち取ることに。公演後のパーティーでその知らせを知ったディーディーがエミリアに伝えに行くと、エミリアは喜んだものの、母親には相変わらず素っ気ない。そこへ、エマが登場し、エマは皆から拍手喝さいを浴びる。それを見てエマに嫉妬するディーディー。
主婦ディーディーVSプリマのエマ
軽んじられたと感じたディディーは一人でバーへ。一方、エマは眠れる森の美女の演出をするよう、カンパニーのトップの女性に宣告され、まだ現役でいたいエマはショックを受ける。打ちひしがれたエマもまた、ディーディーがいるバーへやって来る。
ディーディーは昔、エマと役を争ったことがあり、ディーディーは妊娠をきっかけにその役を諦めたことが20年経った今も引っかかったまま。
それに加え、娘エミリアにそっぽを向かれ、彼女がまたエマになついていることが気に入らないディーディーはエマに喧嘩を売る。エマもまた「明日は公演がないから、今ここで全部ぶちまけろ」と臨戦態勢に。
ディーディーはエミリアを妊娠した時にエマに「子供を産まないと恋人を失う」と言われたといい、自分が役を得るために私を蹴落としたんでしょとエマに言いがかりをつける。キャリアを捨て、主婦になった女とキャリアに邁進してきた女の対戦開始。
2人はバーを出て、外で激しい言い争いをする。
エマは「あなたの嫉妬にうんざり」と言い「子供で夫を縛り、今度は子供を縛っている」とディーディーに指摘する。一方、ディーディーは「キャリアに拘った結果、あなたに残ったのはトーシューズと写真と犬だけ。これから何を支えに生きて行くのよ?」と突っかかる。
2人はひっぱたき合いになるが、途中でバカバカしくなって2人で大笑いする。
ディーディーは「嫉妬は怖いわ。人をモンスターにして、心をゆがませる」と反省する。エマはディーディーにエミリアの妊娠が分かった時に「あの頃の私は役を取るためなら何でも言ってたわ。あなたは上手かったから、怖かった」と本音を初めて話す。それを聞いて、ディーディーは長年のモヤモヤから解放される。
ディーディーと夫
ディーディーは夫に「エマは私が結婚に逃げたと。でもそれは違う。エマはこうも言ったわ。妊娠はあなたがゲイではないことを証明するためだったと。でもそれは本当」と言い、夫も「知ってる。それは本当だ。自分がゲイではないことを証明するために、君からバレエを奪った」と言う。そして「今に満足している」と。2人は絆を深め、2人の様子をこっそり見ていたエミリアは微笑む。
エミリアの時代
世代がかわり、今度はエミリアたちの時代。エマはエミリアにつきっきりでレッスンをする。エミリアはユーリと仲直りをし、眠れる森の美女の大役を踊りきった。
誰もいなくなった舞台の上で、エマとディーディーはエミリアについて語り合う。ディーディーが「彼女が私たち2人の人生を知り尽くせたらね」と言うが、エマは「必要ないわ」と答える。
個人的評価
映画の満足度★★★★★
感想・レビュー
デキ婚で夢を諦めた元バレリーナの主婦ディーディー。エマと大役を争って、もしかしたら自分が勝てたかもしれないのに、妊娠をきっかけに夢を諦めたことが長年、心に引っかかっている。結果的には自分で子供を産む人生を選んだわけだが、それをエマに誘導されたと思い、エマを恨んでいる。
エマは「それは自分で選んだ人生でしょ」とディーディーを突き放しながらも、具体的に何を言ったかは覚えてはいないものの「あの頃は役を勝ち取るためなら何でも言ってた。あなたは上手くて怖かった」と告白することで、ディーディーのモヤモヤを取り除く。
ディーディーが面倒くさいおばさん全開で、自分の浮気が原因で娘には背を向けられているのに、娘に冷たくされることまでエマのせいにするわで、なかなか見苦しい感じなのだが、最終的には取っ組み合いの喧嘩をして、エマと本音をぶつけ合ったことで少しマシになる。
第三者から見れば、ディーディーには「自分で選んだ事だろ」としか言いようがないのだが、何かと被害者意識が強くて厄介極まりない。
家族を選んで夢を諦めた主婦は嫉妬でドロドロになるのに対し、夢を優先して家族を持つことを断念した女性は自分が得られなかったものに対し、しゃーねーなという感じで諦めをつけている。ディーディーおばちゃん、欲の塊。両者の熱量の差がすごい。
女たらしのダンサー、ユーリ役のミハイル・バリシニコフは「セックス・アンド・ザ・シティ」に出ていたロシア人アレクサンドル。SATCではおじいちゃんのイメージしかなかったけど、若い時はすごいバレエダンサーだったらしい。
愛と喝采の日々
解説
プリマ・バレリーナとして成功した女性と、結婚してバレエ界を引退した女性2人の対照的な人生を中心に、女の幸福は結婚か、それとも仕事をもった自立した人生を生きることか?と問いかけ、親と子の情愛を盛りこみながら展開される人生ドラマ。製作総指揮はバレリーナとしても知られるノラ・ケイ。監督はノラの夫君で「ファニー・レディ」のハーバート・ロス、オリジナル脚本はアーサー・ローレンツ(サンリオ刊)でロスと共同で製作も兼ねている。
キャスト・スタッフ
- (ディーディー)シャーリー・マクレーン
- (エマ)アン・バンクロフト
- (ユーリ)ミハイル・バリシニコフ
- (エミリア)レスリー・ブラウン
- (ウェイン)トム・スケリット
- (アデレイド)マーサ・スコット
- (ロジー)アンソニー・ザーブ
- (カーター)マーシャル・トンプソン
- (バーニー・ジョー)ドナルド・ペトリ
- 監督 ハーバート・ロス