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勘違いおじさんの使い途『仕立て屋の恋』【ネタバレあり】

仕立屋の恋 1989年

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再生時間:78分

仕立て屋の恋について

毎夜のぞき見る美しい女に惹(ひ)かれ、彼女を愛するあまり殺人事件に巻き込まれていく仕立て屋の姿を描いたミステリー。「メグレ警視」シリーズなどで知られるジョルジュ・シムノンの小説を基に、フランスの名匠パトリス・ルコント監督が緻密な演出で官能と裏切りのドラマを作り上げた。孤独な中年男の切ない純愛を、ルコント監督作品の常連ミシェル・ブランが体現し、彼を翻弄(ほんろう)するヒロインに『彼女の名はサビーヌ』で長編初監督を果たしたサンドリーヌ・ボネールが扮する。

仕立て屋の恋 (1989) - シネマトゥデイ

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仕立て屋の恋
あらすじ

人付き合いを避け隣人たちから煙たがられている仕立て屋イール(ミシェル・ブラン)のただ一つの楽しみは、向かいのアパートに暮らす美女アリス(サンドリーヌ・ボネール)の私生活をひそかに観察すること。ある日近所で殺人事件が起こり、刑事は孤独な変人イールの犯行ではないかと疑う。一方、自分をのぞき見るイールの存在に気付いたアリスは、彼が真相について知っていることを確かめようと接近するが……。

仕立て屋の恋 (1989) - シネマトゥデイ

キャスト・スタッフ
パトリス・ルコント監督
作品一覧

1987年 タンデム
1989年 仕立て屋の恋
1990年 髪結いの亭主
1993年 タンゴ
1994年 イヴォンヌの香り
1998年 ハーフ・ア・チャンス
1999年 橋の上の娘
2006年 ぼくの大切なともだち

仕立屋の恋
ざっくり言うと ※ネタバレあり
  1. 向かいのアパルトマンに住む若い女性を覗くチビハゲおじさん
  2. 別の若い女性が殺害される事件が起きる
  3. 犯人は女性の婚約者
  4. のぞき見されていることに気づき、おっさんに近づくアリス
  5. 舞い上がるおっさん。アリスに一緒に逃げようと提案
  6. おっさんが留守の間にアリスがおっさんの部屋に殺人事件の証拠品を隠して、おっさんに殺人の罪を着せる
  7. 部屋に戻って来たおっさん、刑事と鉢合わせ
  8. 屋上に逃げるおっさん、転落死。
個人的評価

熱中度 ★★★☆☆

観た後の満足度 ★★★★☆

感想・レビュー

身の程を弁えないおっさんが若い女性に夢中になる現象を「純愛」と表現するのはいい加減やめてほしい。女性からしたら、迷惑且つ不愉快極まりない話。この作品はこういったキモいおっさんを若い女性が超有効利用しようとした話なので、映画としては面白い。

ストーリーと解説と感想 
※ネタバレあり

 学生時代に一度観て「キモい」と思った。久々にまた観たら、やっぱりキモい。同じパトリス・ルコントの作品で年の差の男女を描いた映画でも『髪結いの亭主』とは全然違う。とにかく、おっさんがキモい、以上。

パトリス・ルコントの意地悪さ
仕立て屋の恋』は覗き魔のおっさん(イール)を追う構成のため、向かいのアパルトマンに住む若い女性に恋をしてしまった中年男の悲哀風に描かれているが、パトリス・ルコント監督はところどころ、イールのキモさをいじわるに強調する。
象徴的なのが、イールの後ろ姿。襟足をパッツンと切りそろえたうなじのアップ。「こういうキモいおっさん、いるじゃん(笑)」とも言いたげ。


おっさん(イール)の人物像 

  • 職業は仕立屋。腕はいい。
  • 近所の人からは嫌われている。
  • ペットとしてハツカネズミをたくさん飼っている。
  • 過去にわいせつ事件で懲役刑を受けている。
  • 毎晩、向かいのアパルトマンに住む若い女性(アリス)を覗いている。
  • キレやすい
  • 小者だが態度は尊大

若い女性アリスの人物像

一方、おっさんに覗かれている気の毒なアリスはこんな人。

  • 婚約者(エミール)がいる。
  • 彼は結婚に乗り気ではない。
  • アリスは婚約者に夢中。
  • ある時、向かいのアパルトマンからハゲ頭のおっさんが覗いていることに気づき、驚愕する。

殺人事件の真相
殺人事件の犯人はアリスの婚約者エミール。殺害後にエミールがアリスのアパートを訪れ、助けを求める。それを覗き魔イールが見ていたという流れ。

アリス視点でこの映画のストーリーを語るなら、

  • うわっ、おっさんに覗かれてる
  • あの殺人事件の日も見られてたかも
  • やばい、様子を探らなくちゃ
  • おっさんをランチデートに誘ってみるか
  • やべー、おっさん、その気になっちゃったよ、
  • とりあえず、その気にさせとくか。通報されたら、やばいし
  • ちょっと触らせたら、おっさん、一緒に逃げようとか言って来た。
  • そうだ、おっさんの留守中にエミールから渡された被害者のバッグをおっさんの部屋に置いて、おっさんに殺人の罪をなすりつけちゃお

 ってところでしょうか。

自分とどうにかなろうとしている迷惑な勘違いおじさんの使い途としては、かなり有効利用できていると言える。ストーカーになられても困るし、おっさんが刑務所に行けば、アリスにしたら覗き魔ストーカーを排除できるし、婚約者の罪をなすりつけられるし、一石二鳥。

アリスが残酷なのだろうか、それともおっさんに問題がありすぎるのか。イールのキモい勘違い発言の数々を見てみる。

おっさんのキモい発言
●「娼婦と寝ない理由は君に恋したからだ。愛してる」
俺様は君が好きになったから、娼婦を買わなくなったんだぞ。どうだ、有難がれ!ということか?

「私と逃げるべきだ。彼を思う気持ちは私が忘れさせてみせる」
覗き魔のチビハゲおっさんが何を言ってるんだよ(苦笑)

「どこの誰よりも愛してみせる」
チビハゲおっさんの愛情なんざ若い女性にしたら迷惑以外の何物でもない。

「私の人生を捧げる」
おっさんの人生にどれだけの価値があると思っているのか?

おっさんはアリスと遠くに逃げた前提で、コインロッカーにエミールが犯人である証拠と刑事への手紙を残している。その手紙の内容がこれまた・・・

おっさんが刑事に宛てた手紙

  • 2人(アリスとイール)の幸せを祝福してくれると信じています
  • 私たち(アリスとイール)は一緒にいるだけで幸せなのです

いつの間にかアリスまでイールと一緒にいるのが幸せってことになってるし。こわっ。そして、この手紙でエミールとアリスの罪はイールによって暴露されてしまいます。

アリスの魂胆にやっと気づくおっさん
アリスに駅での待ち合わせをすっぽかされて、部屋に帰って来るイールはアリスに殺人事件の犯人に仕立て上げられていることを知る。おっさん、逃げる。屋根の上を逃げる。当然、落ちる。おっさん、死亡。ラストは、おっさんが転落して行く時の目線で終わる。窓から、転落していくイールを無関心な表情で眺めるアリス。その表情で全てを悟って、おっさんは旅立って行ったことであろう。アーメン。

 
キモいおっさんの勘違い恋物語なのに、マイケル・ナイマンの音楽に乗せると純愛風になってしまって嫌。内容は単なる痛いおっさんの勘違い話。身の程を弁えずに調子に乗ると、こんな目に遭うよという忠告の意味合いが強い。

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